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東京高等裁判所 昭和50年(ラ)424号 決定 1976年5月06日

抗告人(原審被申立人)

小松忠三

右代理人

中村源造

外一名

相手方(原審申立人)(整理会社)

ヤマト開発株式会社

右代表者管理人

笹川陽平

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、原決定を取り消し、更に相当な裁判を求めるというにあり、その理由は別紙のとおりである。

二東京地方裁判所昭和四九年(ヒ)第一、〇〇五号会社整理手続開始申立事件記録によれば、東京地方裁判所は、昭和四九年四月一〇日皆川真孝外二三名から破産者共立総業株式会社破産管財人後藤英三に対する会社整理の申立を受け(同裁判所昭和四九年(ヒ)第一、〇〇五号)、同年六月七日に整理手続を開始し、笹川陽平を共立総業株式会社(東京都中央区日本橋本町一丁目七番三〇号)管理人に選任し、同時に同会社に対し整理計画の立案を命じ、かつ、その提出期限を同年一二月七日とする旨の決定を下したこと、右整理計画案は同年九月四日右裁判所に提出され、同裁判所は、相手方会社(前記共立総業株式会社は、同年六月一八日商号をヤマト開発株式会社と変更し、同月一九日付をもつてその旨登記手続をした。)に対し、右整理計画案の実行を命じたことを認めることができる。

そして、千葉地方裁判所佐倉支部昭和五〇年(ケ)第九号不動産競売事件記録及び本件記録によると、抗告人は昭和五〇年二月二八日相手方に対し抵当権者として昭和四八年一〇月三一日貸し付けた元本金二億三、〇〇〇万円とこれに対する昭和四八年一一月一日以降昭和四九年一月三一日まで日歩金三銭の割合による約定利息金六三四万八、〇〇〇円及びこれらの合計額金二億三、六三四万八、〇〇〇円に対する昭和四九年二月一日以降完済まで年三割の割合による遅延損害金債権を有するとして相手方所有の別紙目録記載の土地につき抵当権実行のため競売を申し立てたこと(同裁判所昭和五〇年(ケ)第九号事件)同裁判所はこれに対し、昭和五〇年三月三日競売手続開始決定を下し、手続を進行していたところ、右会社整理事件に関し、昭和五〇年七月五日管理人笹川陽平から東京地方裁判所に対し競売手続中止命令の申立がなされ、同裁判所は、同年七月一六日、昭和五二年一月三一日まで右競売目的物件に対する競売手続を中止する旨の決定を下したことが認められる。

三よつて按ずるに、前顕各記録によると、本件整理計画案の中枢をなし、その死命を制するというべきは、相手方会社による成田市におけるゴルフ場建設計画の成功であること、前記各物件は右ゴルフ場建設予定地内に散在し、これを用地として使用しえない限り、ゴルフ場の建設は不可能に近いことを認めることができる。

従つて、前記物件は本件会社整理のため欠くことのできないものというべきであるからこれを会社整理のために活用して、整理の実を挙げることこそ債権者一般の利益に適応するということができる。

一方、前記物件がいずれも僻地の山林又は原野で(経済変動による換金上の難易はありえても)、その滅失・毀損による価値の下落等は通常起りえないこと、また、前記競売手続上の評価額も昭和五〇年六月当時三億九五万円であつたことが前掲各記録によつて明らかであり、右事実によれば、抗告人が二億三、〇〇〇万円を貸し付けたと主張する昭和四八年一一月頃においても右貸付金に対する十分な担保力を有したと考えられるのみでなく、原決定による競売手続停止の期間を経過する昭和五二年二月一日以降においてもなお相当な担保力を保有することが予測しえられるから前記中止命令が競売申立人である抗告人に対し不当の損害を及ぼす虞はない。

そればかりでなく、本件記録によれば抗告人主張の債権額につき相手方はこれを争い、抗告人主張の貸借関係に関する貸付金元本として現実に交付されたのは金一億二、〇二四万〇、一六〇円であるとし、昭和五〇年四月二一日右元本に同日までの利息損害金として金四、七二九万九、五九〇円を加えた合計金一億六、七五三万九、七五〇円を抗告人方に持参提供したが、抗告人はこれを債務の本旨に従つた弁済の提供ではないとして受領を拒んだことが認められるほか、抗告人の前記債権の全部ないし相当部分は本件会社整理手続の成否に係らず抵当権によつて担保されているのに反し、他の債権者の大多数は本件会社整理手続を通じてのみその債権が回収される見込を有するというべき状態にあることが窺われ、このような場合において競売手続の続行を認めることは、会社整理制度の目的に反するから許しえない。

抗告人が抗告理由において主張するところは、これを認めるに足りる資料がないか、又は、以上述べ来つたところによつて理由がないことが明らかな事由に基づくものであるからいずれも採用できない。

よつて、本件抗告は理由がないから棄却し、抗告費用を抗告人に負担せしめて主文のとおり決定する。

(吉岡進 兼子徹夫 太田豊)

抗告理由書《省略》

物件目録《省略》

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